私たちに見える世界は本当の世界ではない(松浦 壮)

今見ている物体は「物体そのもの」ではない。視界に映っているのは、物体に反射した(と想像される)光が目に飛び込み、網膜に分布した視細胞が光に反応して電気信号を脳に送り、脳がその信号を処理することによって作り出された、いわば仮想現実だ。
物体からもたらされるのは視覚情報だけではない。物体からの情報は、触覚、聴覚、嗅覚によっても捉えられ、電気信号に変換されて脳に伝わる。人の脳は、それぞれのセンサーからやってくる電気信号のすべてと整合するように「物体の想像図」を構築する。物体の存在にリアリティを感じるのは、この想像図が五感を通じて得られた情報のどれとも矛盾しないからだ。
これは私たちが認識しているすべての物事について言える。極論でもなんでもなく、私たちは最初から「世界そのもの」など見てはいない。見ていると思っているものはすべて、五感を通じて行われた「測定」と矛盾しないように構成された世界の想像図なのだ。

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