2025年1月24日~1月30日
布を見て買おうかどうか迷う君
欲しいものなら買えばいいのに
市場で欲しいものを見つけたあと、迷っている君がいる。覗くと、君の前には刺繡のほどこされた布がある。値段を聞くと、たったの200バーツ。千円もしない。その布を纏った君が目に浮かぶ。買えばいいのにと思う。
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思ってた菓子は売ってはいないけど
デザートハウスの餅菓子うまし
デザートハウスという評判のいい店をインターネットで見つけ、出かけて行った。デザートを売っているような店は見つからず、代わりに餅菓子のようなものを売っている店がある。餅菓子を売る老婆を見て、あっと気がつく。その店がデザートハウスだったのだ。
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ジャカランダ ノウゼンカズラ カエンボク
何と呼んでも花は咲いてる
白く咲く花を見てジャカランダだと思い、赤く咲く花を見てジャカランダだと思う。黄色いのも紫色のもジャカランダだと思ってみて、あれっと思い、インターネットで名前を探す。名前は言葉ごとに違う。種類わけも言葉によって違う。ぜんぶジャカランダでいい。それが嫌なら、花と呼ぼう。花が咲いている。それでいい。
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暑いなか散歩をすれば修行僧
われはいつから出家したのか
暑いなか、冷房の効いた部屋を抜け出し、散歩に出た。南国の太陽は容赦なく照りつけ、歩みはのろい。まるで修行僧が強いられた苦行ではないか。私はいつから修行僧になったというのか。今日は海の風まで優しくない。暑い。
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タイの道 歩道があったり なかったり
前からクルマ 横からバイク
ホアヒンの街を歩く。歩道があっても途切れ途切れ。しかもデコボコだ。工事をしていたり、クルマが停まっていたりすれば、車のための道を歩かなければならない。はっきり言って怖い。
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白いシャツ探し求めて店めぐる
私を待ってるシャツはいずこに
白いシャツが着たくなった。どこかに私を待っているシャツがあるに違いない。そう思って店を巡る。このシャツも違う。あのシャツも違う。私を待っている白いだけのシャツには出会えないのだろうか。そう思ったとき、白いシャツが目の前にあらわれる。やっぱりあったのだ。
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ロシア語が周りにわかるはずないと
あけっぴろげに話す人たち
周りにロシア語がわかる人などいないだろうと高を括り、不正蓄財、不正送金、不正滞在などについて大声で話し続けるロシア人たち。南国の海辺の空気がそうさせるのだろうが、あまりにも不用心だ。
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ピザ店をひとりで切り盛りする少女
そのけなげさが売上げを上げる
ピザ屋に入った。注文をとるのも、料理をするのも、料理を出すのも、会計も、要するに何もかもを、少女がひとりでやっていた。もっと楽にカネを稼ぐこともできるだろうにと思うと、そのけなげさに心を打たれた。
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ヘアサロン迎えに来たのは外国人
女の顔に幸せ浮かぶ
タイの女性がヘアサロンで髪を切り終わったところに、外国人男性が現れた。女性を見ると「きれいになったね」と大げさに喜ぶ。女性は幸せそうに微笑んだ。女をカネで買う男と、その男にぶら下がる女。そんなカップルをたくさん見たあとで目にした男女の姿はさわやかだった。
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午後3時太陽避けてコーヒー屋
からだの芯まで冷える飲み物
ホワヒンの午後3時、あまりにも暑いので、コーヒー店に逃げ込むかのように入る。頼んだことのない飲み物を頼んだら、氷を砕いたような飲み物が来た。からだの芯まで冷えたような気がした。
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この場所に静かな音がよく似合う
ゆっくりとした純な旋律
ホワヒンのけだるい午後、クーラーのよく効いた店に、静かな音楽が流れている。ゆっくりとした曲が、ゆったりとした店の雰囲気によく似合う。メロディーも奇をてらったものではなく、こころが落ち着く。
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ここに来て座って一緒に食べようよ
おばさんの味 地元のお菓子
こっちに来ない? そんなあたりまえの台詞で君を誘う。さっき買ったお菓子を一緒に食べようよ。あのおばさんが作ったお菓子。地元の味を一緒に味わおう。
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夕焼けの色がきれいとカメラ向け
シャッター切るも写真に写らず
きれいな夕焼けを写真に残そうと、カメラを向けてシャッターを切る。どんな写真が撮れたのだろうとチェックすると、きれいな夕焼けは撮れていない。気がつくと、夕焼けの色は変わっている。きれいな夕焼けという一瞬を写真に残そうとした私が、間違っていたのだろう。
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うらさびて閑散とした風景を
栄華のあととはとても言えない
昔はもっと立派だっただろう広い道路を歩いた。昔はもっと立派だっただろう庭付き家が並んでいた。人はいない。クルマも通らない。昔はもっと立派だっただろう公園には、昔はもっと立派だっただろう人が何人かベンチに座っていた。うらさびた風景を見て「Stranger Than Paradise」という映画を思い出した。僕はこの風景が好きなのかもしれない。
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英語とか通じなくても困らない
こころかよわせ料理を頼む
町はずれの家庭料理を出す店の前を通りかかり、店に入る。メニューはタイ語のみ。グーグル翻訳もあまりあてにならない。さあ困った。ところが店の人は困ったようすもなくオーダーを取り、奥に消える。少々不安だったが、おいしい昼食をいただいた。ビールに氷が入っていたのが面白かった。
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