バンコクの不条理

2025年2月11日~14日

 
人は皆あんなこんなで忙しい
でも止まれない理由は知らない

この街では、人は誰もが忙しい。でもなぜ忙しいのか、なんのために忙しくしているのか、そんなことを知っている人はいない。

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人々が気にするPM2.5
車もバイクも多すぎる街

ガソリン車やガソリンバイクのエンジンを動かせば、PM2.5が排出される。風が吹いたり雨が降ることが少なく、高層ビルが立ち並ぶ街では、PM2.5は地表に留まる。朝夕のラッシュアワーには、街にいるのが耐えがたい。この街には車もバイクも多すぎる。いや、人が多すぎるのだ。

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この街の速さについてゆけないと
海辺から来た僕は弱気に

東京で育った僕には、バンコクの街の速さなんて、なんていうことない。と言ってみたものの、ホワヒンで五週間過ごしたあとバンコクに来て、街の速さに少し弱気になっている。人が歩く速さ、ものの売り買いの速さ、とにかく何でもかんでも速いのだ。

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バンコクには物は何でもあるけれど
ホワヒンにある優しさはない

バンコクでは何もかもが大きくて、ひとりひとりが与えられた権限は小さい。インフォメーションで何かを尋ねても「ぼんやりとした答え」しか返ってこない。役に立とうとか、助けようとか、そんなことを考えていたら、バンコクでは生きてゆけないのかもしれない。

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王様と権力者とが富をかすめ
悪をあがめる無知と貧困

タイ王様は世界で最も裕福な王様だという。王様の悪口を言う人はいない。もし悪口を言えば、何十年もの刑務所暮らしが待っているからだ。タイの首相は世界で最も裕福な首相だという。首相の父親も叔母も首相だったし、在任中はやはり世界一裕福な首相だった。民衆は、そんな王様を敬い、そんな首相を選ぶ。

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物乞いがいない街だと言うけれど
物乞い以下がやたら目につく

バンコクには物乞いはいないと聞いていで街を歩いてみれば、物乞いがいるばかりでなく、物乞い以下と言えるような人がたくさん目につく。ものが溢れる豊かな街のなかで、豊かさの恩恵に預かれない人たちが蠢いている。

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鑑真に思いをはせる君がいて
三千の骨をどう信じろと

鑑真が仏舎利を、つまり釈迦の遺骨のかけらを、中国から3千個も持って来たという。そんなことは誰も信じてはいない。信じてはいないが、信じているフリをして有難がる。そのことと、日本にやって来てくれた鑑真のこととは、切り離して考えたほうがいいのではないか。

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人間って何なんだろうと君が言う
海辺の蟹の素早さを思う

人間って何なんだろうと君が言う。人間が特別だと考えるから、そんな疑問が生じるのではないか。海辺の蟹の素早さをを見て、誰も、蟹って何なんだろうとは言わない。蟹が人間に踏まれないように素早く動くように、人間が何かをしたからといって、人間について深く考える必要はないのではないか。

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渋滞でイライラしながら過ごすより
海でゆっく過ごすのががいい

どの道路もクルマやバイクでいっぱいで、渋滞が常態化している。渋滞に巻き込まれた人たちは、例外なくイライラしている。同じ時間を過ごすなら、渋滞のなかで過ごすより、海岸でゆっくり過ごしたほうがずっといい。

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この街で今日を生きていくために
愛も自由も夢もいらない

この街で生きていくためには、明日のことなど考えてはいられない。生き延びるために、今日のことだけを考える。愛とか自由とか夢とかいった余計なことは考えない。どうしたら今日食べられるか。それだけを考える。それがこの街のやり方だ。

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灰色のコンクリートにアスファルト
漂う空気も人も灰色

コンクリートの建造物が作られあ時の色は、こんな灰色ではなかっただろう。道路にアスファルトが敷かれた時の色も、こんな灰色ではなかっただろう。コンクリートもアスファルトも同じ灰色になり、終いには空気も人も同じ灰色になってしまう。バンコクは恐ろしい。

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ビジネスと物見遊山が交差する
あなたはどちら私はどちら

忙しい街のなかをビジネスの人たちが走り回り、観光客たちが走り回る。誰がビジネスに携わっているのか、誰が物見遊山で訪れているのか、見ただけではわからない。でも、誰もがなぜか忙しそうだ。忙しくすることがこの街のルールであるかのように。

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空に向かい聳えるビルの手前には
地を這うような家が連なる

直線的に空に伸びるビルは、必要のないものは省かれ、機能美に満ちている。その手前に見える古い家は、壊れた壁と、壊れた屋根と、線と、管と、ゴミとに囲まれ、聳えるビルと対照をなしている。どちらもバンコクらしい。

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カネでつり人を破滅に誘い込む
悪魔の街は疲れる場所だ

この街に集まって来る人の目的は、カネだろう。ところが、カネのためにこの街に来た人のもとに、カネが集まることはない。集まって来た人たちは、金持ちに利用され、貧しいままだ。その仕組みが変わることはない。いて疲れる。見ていて疲れる。

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たくさんの人が集まる大都会
夢もチャンスもじつはまぼろし

この街でテレビを見ていると、夢を実現した人や、チャンスをものにした人が登場し、あたかもそれが誰にでも起こるかのように話す。そんなことは、ほとんどに人に起きない。なぜなら、それは、まぼろしだから。

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