狩猟採集社会は小規模で移動生活をしていたため、富の蓄積も権力の固定化も起こりにくく、人間は平等だった。
現在からおよそ1万2000年前から2000年前にかけて地球のあちらこちらで人間は農耕を始め、人間は平等でなくなってきた。農耕が余剰生産を生み、定住化により人口が増え、余剰の分配をめぐり権力の集中と階層化が進んだのだ。
支配階級が制度化され「一部の人間が大多数を手なづけて利用する」構造が持続的・制度的な形で出現した。支配ー被支配の関係は単なる暴力の結果ではなく、双方の生存戦略として機能したと考えられる。
農耕社会では、個人が単独で生きるより集団に属した方が生存確率が高い。支配者は治水・防衛・祭祀・秩序維持などを担い、集団の安定性を高め、その見返りとして人々は労働や従属を受け入れた。この「互いの利益の非対称な交換」が、人間が植物や動物と結んだ関係の『人間版』(人間による人間の家畜化)として成立したのだ。
農耕社会は人間を規律・労働・従属に適応させる圧力を生んだため、人間は従順さ・協調性・権威受容を強める方向に文化進化した。これは動物の家畜化と構造的に似ている。
人間は尊敬される者への服従を適応的に選択する心理を持つ。これは、支配者が単なる暴力者ではなく、集団に利益をもたらす者だと認識されるとき、服従が合理的になるということを示している。
Tamed
Ten Species that Changed our World
by Alice Roberts