投稿者「phrh205455」のアーカイブ

時間は存在しない(カルロ・ロヴェッリ)

ニュートンやアインシュタインはそれぞれの方法で時間と空間が入り交じる「時空」を想定したが、量子論を取り入れたループ量子重力理論では、分割不可能な最小単位である「空間量子」が連続することで、まるで時間や空間といった一つなぎのものが存在するかのように「見えるだけ」としている。
空間量子が空間を埋め尽くしているのではなく、空間量子それ自体が空間なのである。それらは時間の中に存在するのではなく、絶えず相互作用しあっていて、それこそがこの世界のあらゆる出来事を発生させている。時間は、元来方向があるわけではなく一直線でもなく、さらにいえばアインシュタインが研究したなめらかで曲がった幾何学のなかで生じるわけでもない。量子は相互作用という振る舞いを通じて、その相互作用においてのみ、さらには相互作用の相手との関係に限って、姿を表す。

私たちに見える世界は本当の世界ではない(松浦 壮)

今見ている物体は「物体そのもの」ではない。視界に映っているのは、物体に反射した(と想像される)光が目に飛び込み、網膜に分布した視細胞が光に反応して電気信号を脳に送り、脳がその信号を処理することによって作り出された、いわば仮想現実だ。
物体からもたらされるのは視覚情報だけではない。物体からの情報は、触覚、聴覚、嗅覚によっても捉えられ、電気信号に変換されて脳に伝わる。人の脳は、それぞれのセンサーからやってくる電気信号のすべてと整合するように「物体の想像図」を構築する。物体の存在にリアリティを感じるのは、この想像図が五感を通じて得られた情報のどれとも矛盾しないからだ。
これは私たちが認識しているすべての物事について言える。極論でもなんでもなく、私たちは最初から「世界そのもの」など見てはいない。見ていると思っているものはすべて、五感を通じて行われた「測定」と矛盾しないように構成された世界の想像図なのだ。

Quantum Geometry

There’s more to quantum gravity than gravitons, which would represent just the mildest ripples in space-time. A full theory would need to go beyond ripples to describe what happens when stars collapse and form black holes, warping the space-time fabric to oblivion. It should also account for how space-time came into existence during the Big Bang. Feynman diagrams capture only the minimal ripples of a quantum field and nothing more. So the full picture — what physicists call a “nonperturbative” theory — might be beyond the reach of the geometric paleophysics that these researchers are exploring.

日本社会のしくみ(小熊英二)

「日本社会のしくみ」は、現代では、大きな閉塞感を生んでいる。女性や外国人に対する閉鎖性、「地方」や非正規雇用との格差などばかりではない。転職のしにくさ、高度人材獲得の困難、長時間労働のわりに生産性が低いこと、ワークライフバランスの悪さなど、多くの問題が指摘されている。
しかし、それに対する改革がなんども叫ばれているのに、なかなか変わっていかない。それはなぜなのか。そもそもこういう「社会のしくみ」は、どんな経緯でできあがってきたのか。この問題を探究することは、日本経済がピークだった時代から約30年が過ぎたいま、あらためて重要なことだろう。